遺言がいいのか?信託がいいのか?

遺言がいいのか?信託がいいのか?

遺言と信託はどちらがいいの?

終活のセミナーや書籍には最近、生前対策としての「遺言」と併せて「信託」という言葉をよく聞かれるのではないでしょうか。
この2つの制度は、生前に準備する法律制度としてどちらも有効なものです。
ただ、どちらにしたらいいのか?これはなかなか難しいかと思います。
そもそも、どちらの制度もよくわからない・・・そんな方が多いのではないでしょうか。
遺言は『民法』という法律を根拠にしています。
それに対して信託は『信託法』が根拠になっています。
つまり、違う法律の制度なのです。
一つの法律だけでもややこしいのに、それが2つあって、その中身もけっこう複雑となれば、混乱します。
そんなときは専門家に聞けばいいのですが、最近相続の専門家と名乗る方々も乱立気味で、誰に聞いたらいいのか?そこで又悩んでしまいます。
遺言の専門家、信託の専門家だけならまだいいのですが、生命保険で遺言を勧める人、不動産業者で信託を勧める人、相続アドバイザー、相続コンサルタントを名乗る方、建設業者と提携している士業、
その他信託銀行を中心として金融機関まで、相続・遺言・信託の専門家として名を連ねています。

だからなるべく何にも偏らない人のお話を聞いたほうがいいです。
遺言ありきとか、信託ありきではありません。
それは、自分の課題を解決するための手段・方法であって目的になってはいけないからです。

どちらがいいかは、目的と内容によります。

他のページでも書いていますので、遺言と信託の違いはここでは詳しくは書きません。
簡潔にまとめれば、遺言は単独行為であり、民法に遺言事項が決められています。
つまり、一人で遺言できるのですが、何でもは無理であり法律で決められた事項のみ遺言できます。
又、その方式が決められていて、決められた方式以外の方法で行った遺言は無効になります。

それに対して、信託は例外(遺言信託等)はありますが、基本は契約なので一度内容を決めると一人では変更や取り消すことができません。又、関係者が増えるのでその内容を決めることに時間がかかります。
遺言よりも内容と方式に自由性があり、遺言でできないことも決めることができます。

こう書くと一見信託の方が良さそうに見えますが、そこはよく考えたほうがいいです。
信託契約書を作成するには、関係者(受託者)の同意が必要ですし、場合によりその他の関係者の同意も必要になります。
又、内容が法律的に複雑で、作成するには専門家に依頼しなければならないのですが、その費用は遺言に比べてかなり高額になることが普通です。
遺言でもできることは信託でもできるのですが、その必要性が本当にあるのかは事前によく検討すべきでしょう。
又、不動産が関係する場合は、信託の場合は「信託登記」というものがなされます。
これにより、第三者はその登記内容を自由に閲覧できますので、知られたくない人に内容を知られる可能性もあります。

もちろん、信託にしかできない事項もたくさんありますので、それが本当に必要なら信託を採用したらいいのです。

そのため、遺言がいいのか、信託がいいのかということについては、まずはご自身の相続の目的とその内容を整理したうえで、しかるべき専門家に相談されることをお勧めします。

悩まれている方がおられましたら、当事務所でもご相談を承っております。