相続問題Q&A

2018年8月13日

Q&A よくあるご質問と回答例
Q1、遺言書を発見したらどうすればいい?

Q2、相続手続きが終わるまで預金は使えないの?

Q3、戸籍の集め方はどうすればいいの?

Q4、連絡がとれない相続人がいる場合は?

Q5、遺産はどのように探せばいいの?

Q6、内縁の妻に財産を残すには?

Q7、死んだ父親の借金は返す必要があるの?

Q8、分割協議後に新しい遺産が見つかったときは?

Q9、土地や建物の名義は変更する必要があるの?

Q10、認知症の場合、遺言書は作成可能なの?

Q11、財産が自宅のみの場合はどうするの?

Q12、親の介護をしたら財産はたくさんもらえるの?

Q13、遺言執行者って何するの?

Q14、養子は実子と同じように相続できるの?

Q15、遺贈を受けると相続分が減るの?

Q16、遺留分減殺請求は第三者にもできるの?

Q17、遺産分割協議はいつすればいいの?

Q18、遺産分割協議書は認め印でもいいの?

Q1、遺言書を発見したらどうすればいい?

A,家庭裁判所に検認の申し立てをしなければなりません。

自筆証書遺言書と秘密証書遺言書は、家庭裁判所で検認を受けなくてはいけません。
検認とは遺言書を保管しているもの(発見者)が家庭裁判所へ遺言書を提出して相続人立ち会いのもと、遺言書の開封及び遺言書の内容を確認することです。遺言書の現状を確認し、証拠を保全する手続きです。ただし、検認をうけたから、遺言書が有効ということにはなりません。あくまでも証拠保全の手続きです。

又封印のある遺言書はこれを勝手に開封してはいけません。勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられます。

Q2,相続手続きが終わるまで預金は使えないの?

A.使うことはできません。

故人の預金は遺産分割手続きが終了するまで、相続人全員の共有財産となります。金融機関が死亡を確認すると預金の引き出しができなくなります。(口座凍結)これは金融機関が相続人の間のトラブルに巻き込まれることを防ぐための自衛策とも考えられます。

又、口座凍結前に葬儀代などの引き出しをした場合は、これも遺産分割協議できちんと清算する必要があります。

Q3,戸籍の集め方はどうすればいいの?

A.故人は生まれてから死亡までの戸籍、相続人は現在の戸籍を集めます。

まずは故人の本籍地の役所で出生から死亡までの連続した複数の戸籍(現在戸籍・戸籍の除票・除籍謄本・改製原戸籍など)を集められるだけ集めます。ただ通常は一つの役所だけで全部揃うことはありません。

取り寄せた戸籍に漏れがある場合、手続きができません。又改正原戸籍や除籍謄本など昔の戸籍は読みにくい字で書かれてある場合も多く、解読に時間がかかる場合もあります。

又、遠方の役所の場合は郵送で取り寄せます。必要書類は請求先のホームホームページからダウンロードできることが多いです。これを繰り返し必要な書類を集めます。

Q4,連絡が取れない相続人がいる場合は?

A.失踪宣告審判の申し立て又は不在者財産管理人選任の申し立てを行います。

相続人の生死不明の状態が7年経過していれば利害関係人が家庭裁判所に「失踪宣告審判の申し立て」を行います。これにより相続人の子が代襲相続人となり遺産分割協議に参加できます。

又、またその他の方法として利害関係人が家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申し立て」を行いその管理人が他の共同相続人と遺産分割協議を行います。この場合は財産処分行為となり管理人の権限を越えることから家庭裁判所の許可が必要です。

Q5,遺産はどのように探せばいいの?

A.住宅内の証書関係、取引のあった金融機関等を調べます。

財産的価値のあるものは、不動産と預貯金、及び株券や債券です。

不動産は登記済証(権利証)、預貯金は通帳を確認する他、金融機関や証券会社に直接問い合わせます。又相続人が全員で思い当ることを事前に話してみるのも有効です。

借入金などの消極的財産にも注意が必要です。金融機関からの借り入れの場合は金銭消費貸借契約書、友人・知人からの借り入れの場合は借用者などが見つかる場合もあります。

Q6,内縁の妻に財産を残すには?

A.内縁の妻には相続権がないので遺言が必要です。

いくら長く生活を共にしていても正式な婚姻関係がなければ、法律上は全くの他人です。したがって相続として財産を受け取ることはできません。この場合は遺言書にその旨をきちんと明記するか、死因贈与契約を結ぶしか方法がありません。内縁の妻との間にできた子は認知をしていれば相続権があります。

Q7,死んだ父親の借金は返す必要があるの?

A.相続放棄をしない限り、相続人に返済義務があります。

父親に借金があり、その額が財産の額を上回るときは、相続人は相続放棄をすることができます。ただしそれができるのは相続人が相続開始を知ってから3カ月以内です。この手続きを期限内にしないと自動的に相続をすべて承認したものとみなされます。尚、相続人が複数いる場合は相続人各自が法定相続分にしたがって債務を相続します。

Q8,分割協議後に新しい遺産が見つかったときは?

A.漏れていたことを知っていれば、そのような遺産分割をしなかったと思われるときは錯誤による無効、そうでないときは漏れていた遺産につき再度遺産分割協議をします。

遺産分割協議後に、新しい遺産が見つかったときの対処法にははっきりした条文はありません。この場合はその遺産が重要であるかそうでないかによって分かれます。重要な遺産であれば遺産分割協議が無効、そうでないときは新たに見つかった遺産に関して再度遺産分割協議をします。遺言でこのようなケースについて決めておくのも一つの方法です。

Q9,土地や建物の名義は変更する必要があるの?

A.登記は義務ではありませんが、変えたほうがいいです。

売却したり、金融機関から借り入れを行い、担保として抵当権を設定する場合などは、名義を変更する必要があります。この場合、すでに相続人の一人が亡くなっていれば、その相続人の印鑑が必要になります。時間の経過とともに、そうした関係者が増えてきます。このためできるだけ早い時期に名義を変更したほうがいいのです。

Q10,認知症の場合、遺言書は作成可能なの?

A.遺言のときに遺言をする能力がなければなりません。

遺言者は遺言をする時においてその能力を有しなければならない。(民法963条)

このことから遺言内容を理解し、遺言の結果を理解する意思能力が必要とされています。認知症であるから遺言ができないということではありません。遺言内容と作成の経緯も検討され、その能力があったかが判断されます。尚、成年被後見人の場合は医師2人以上が立会い、遺言時に心身喪失の状態でなかった旨を遺言書に付記して署名捺印する必要があります。

Q11,財産が自宅のみの場合はどうするの?

A.ご事情により方法は異なります。

遺産が自宅の土地建物のみの場合は、相続人の置かれた状況により異なりますので、遺産分割協議で話し合いが必要です。その住居に被相続人の妻(母)が住んでいる場合はその住宅を売却してお金にする(換価分割)はできませんので、それに代わる方法として、母がその住宅を全部相続して、お金を子どもたちに支払うという方法(代償分割)もあります。ただこの場合は支払うお金がなければなりません。尚このような問題に対し、相続法改正の動きがあり配偶者居住権の創設が予定されています。

Q12,親の介護をしたら財産をたくさんもらえるの?

A.介護をしただけではもらえません。財産の維持又は増加に特別の寄与をする必要があります。

寄与分という制度があります。(民法904条の2)これが認められればその分財産を多く相続できます。寄与分が認められるのは共同相続人であり、①被相続人の事業に関する労務の提供又は財産の給付②被相続人の療養看護③その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした場合に認められます。

したがって、いくら介護をしていてもそれが親の財産の維持や増加につながらなければ寄与分は認められません。例えば、子どもが親の自宅で介護することにより親が介護施設に入らなくて済み、その結果親の財産が減らなかったことが明確に証明できるときなどです。

Q13,遺言執行者って何するの?

A.遺言内容を確実に実行する役割をもって指定される人です。

遺言を残す目的はその内容を確実に実現することにあります。遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。(民1012)

未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができません。(民1009)
この条文の裏を返せば「未成年者と破産者以外なら基本的に誰でも遺言執行者になれますよ」という意味となります。このことから国家資格者であり、相続に詳しい行政書士等を遺言執行者に指定することの意味があります。

Q14,養子は実子と同じように相続できるの?

A.養子は実子と同じ相続権を持ちます。

養子の法律上の地位は実子と全く同じです。従って養子は実子と同じ相続権を持ちます。

養子は実際には親子関係の無い者が、契約によって養子縁組を結びます。そして契約の日から実子関係と同一の親族関係が成立する制度です。

実親との親族関係が継続する普通養子縁組と実親との親族関係が終了する特別養子縁組があります。

Q15,遺贈を受けると相続分が減るの?

A.相続人が遺贈を受けた場合、原則的には相続分が減ります。

具体的相続分という考え方があります。具体的相続分とは共同相続人の中に被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けた者がいた場合に、これらの遺贈や贈与などの特別な受益を考慮して算定される相続分のことです。(民903)

しかし、被相続人がこの内容と異なった意思表示をした場合は、その意思表示の内容が優先されます。これを持ち戻しの免除といいます。

ただし、この場合でも遺留分を侵害された相続人は遺留分減殺請求権を行使できます。

Q16,遺留分減殺請求は相続人以外にもできるの?

A.遺留分減殺請求は相続人以外の第三者にもすることができます。

各相続人の具体的相続分を出すときの持ち戻しは相続人の間だけで行いますが、遺留分請求は相続人以外の第三者に対しても行使可能です。他人に対してなされた生前贈与などです。但しこの場合は、相続が開始したときから遡って原則1年前までの期間内になされた贈与に限ります。

Q17,遺産分割協議はいつすればいいの?

A.遺産分割協議はいつでもできます。

遺産分割協議の時期や方法については、特に決まりはありません。したがっていつでもできます。又相続人が一堂に会する必要もありません。事前に中心となる人が相続人全員の意見を聞き取り、それをまとめて書面にし、その後署名と印鑑証明書を集めるということもできます。

但し、相続放棄や限定承認をする場合は自己のために相続の開始があったときから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。

Q18,遺産分割協議書は認め印でもいいの?

A.認め印でも原則として有効です。

遺産分割協議書自体の効力は認め印でも有効です。しかし不動産の名義変更登記をするときは印鑑証明書の添付を要求されます。

又金融機関で預金の払い戻しの場合も、相続人全員の印鑑証明書が要求されます。このことから相続実務では実印での押印が一般的になされています。