相続が発生したら

相続が発生したら

2024年3月21日

相続が発生したらまずやること

葬儀の手配、役所その他関係機関の届出等は、待ったなしで行う必要がありますが、それが一段落したら、次は故人の財産の相続について、手続きを進めていかなければなりません。
具体的な手続きについては、別のページで説明することとして、ここではその前提となる注意事項と忘れがちな事項について書いていきます。

遺言書の有無の調査

故人が生前作成した、遺言書がある場合は、基本的にその内容に沿って財産の分配を行います。
そのため、遺言書があるか、無いかではその後の手続がかなり異なります。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、自分で好きな紙に、法定された様式に従い、遺言したい内容を書いて保存するものです。
保存の方法は、自分でタンスとか、机の引き出し等に保存する方法と2020年(令和2年)7月10日からスタートした、法務局に保管する自筆証書遺言書保管制度があります。
自分で書いて、自分で保管している場合は、見つけられないことも多分あり、または見つけられたとしても、それが相続人であった場合、それぞれの思惑から、その遺言書を隠蔽・破棄してしまうことも考えられます。(それがわかれば相続欠格事由になり、相続人の資格はなくなりますが)
とにかく、保管しそうな場所を、手寧に探してみるしかありません。
法務局に保管している場合は、遺言書情報証明書、遺言書保管事実証明書の交付請求をしてその有無を確認します。

公正証書遺言は、遺言書が公証役場に保管されています。
公正証書遺言の検索システムがあり、最寄りの公証役場所定の書類を持参すれば、全国の公証役場に保管されている公正証書遺言の有無及び保管公証役場を検索することができます。

遺言書の検認

遺言書が見つかれば、その次は家庭裁判所での検認です。
もっとも、公正証書遺言と法務局に保管されている自筆証書遺言は検認の必要がありません。
自分で保管している自筆証書遺言のみ、検認が必要です。
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に自筆証書遺言の検認の申立てを行います。
申立てができるのは、遺言書の保管者と遺言書を発見した相続人です。申立てには、遺言者とその相続人の戸籍謄抄本(全部事項証明書、一部事項証明書)が必要です。
検認の目的は、相続人にその存在を知らせることと、遺言書が法定の形式で作成されているかを確認することです。
注意点として、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
ただ、自分で保管していた自筆証書遺言は、子の検認手続きを経なければ、その後の手続にその遺言書を使用することができません。

相続人の特定

遺言書が無い場合は、相続人全員で遺産分割協議をする必要であり、そのためには相続人が誰なのかを確定する必要があります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍をそれぞれの市町村で取得します。
相続人は、1番 配偶者と子、2番 配偶者と親、3番 配偶者と兄弟姉妹です。
先番手の相続人がいる場合は、後番手の人は相続人ではなくなります。
配偶者は常に相続人です。
相続人が先に死亡している場合はその子供が相続人になります。(代襲相続人)だだし、兄弟姉妹については代襲相続は1回限りです。(つまり、甥・姪は代襲相続人になれますが、甥の子、姪の子は代襲相続できません。)
離婚した前配偶者との間に子供がいる場合は、当然その子供も相続人になります。
離婚した前配偶者は相続人ではありません。順番に戸籍を辿りながら、相続人を確定していきます。

遺言書がある場合は、必ずしも全ての戸籍が必要ではありませんが、金融機関の預金解約や不動産の名義変更には、一部の戸籍が必要になります。

相続財産の確認

預貯金

預貯金であれば、とりあえずタンスや引き出しの中を調べて、通帳関係、キャッシュカード「の有無を調べます。
又、通帳関係が見つからなくても、心当たりのある金融機関があれば、その担当支店に対して残高証明書の請求をすることができます。通常はその支店以外にも残高があった場合はそれも教えてくれるはずです。
ただ、どこの金融機関に残高があるかを、一発でわかるのような方法は現時点ではありません。
思い当たる金融機関を地道に確認していくしかありません。

不動産

不動産の場合は、不動産の権利証(最近登記されたものであれば登記事項証明書といいます。)が見つかれば、それで不動産の所有がわかります。
そのほか、自宅やマンション、田・畑、山林等、普段からどこにあるか知っているのであれば、その不動産を管轄する法務局に確認ができます。
ある市町村のどこかにあるとは聞いていたけれど、どこにあるかわからないときは、その市町村役場の固定資産税担当部署に行き、固定資産の名寄せ台帳の閲覧をします。
名寄せ台帳とは、その市町村に存在するその人が所有している不動産の一覧表です。
これを閲覧すれば、その市町村にある、故人が所有していた不動産はほぼ把握できます。
(全部ではない可能性もあります。評価的に固定資産税の課税対象にならない場合は、一覧にないケースもあります。)

その他財産的価値のあるもの

客観的な基準で金銭的価値として評価換算できるものは、相続財産となります。
株式・貴金属・絵画等の美術品・自動車・骨董品等がその対象になります。
これらがある場合はその内訳明細を作成します。この評価は専門家に依頼するほうがいいでしょう。

財産の評価額を算出

これは、いつの時点の評価を元にすればいいかとうことですが、これはその評価額を使用する目的による違いがあります。
遺産分割を目的とする場合は、基本分割時の評価額を基本とします。(但し、相続人全員で例えば相続発生時の評価額にすると決めれば、それでも大丈夫です。)
相続税の計算に使用する場合の考え方は、相続発生時の評価額と法律で定められています。

預貯金は金融機関の残高証明書が一番明確です。

不動産の場合で、遺産分割を目的とする場合は、分割時の時価とする場合が多いです。
相続人全員が合意した方法であればいいのですが、不動産業者の査定書を参考にしたり、路線価ベースにそれを0・8で割った金額を使用したりします。

相続税を計算する場合は、国税庁が出している財産評価基本通達をベースに計算されます。通常は税理士が計算しますが、不動産鑑定士が行う場合もあります。
相続税の計算に使用するための不動産評価の計算はかなり専門的で、納税額にダイレクトに影響しますので、税理士も慎重に行っています。

その他の財産もそれぞれ遺産分割に使用するのか、相続税の計算に使用するのかでその計算方法が異なりますが、基本的な考え方は同じです。特殊な鑑定が必要な場合は、専門家に依頼します。

相続財産を分ける

遺言書がある場合は遺言書に従い分配します。
遺言書中に遺言執行者の指定があれば、遺言執行者がこれを行います。
このとき遺留分侵害に注意する必要があります。各相続人の遺留分を侵害する遺言書自体は違法ではないのですが、遺留分侵害があった場合に、その遺留分の侵害をされている相続には遺留分侵害額請求権があり、これは遺留分侵害がある相続や贈与があったことを知ってから1年以内に請求することができます。
内容証明郵便等で請求するだけでいいのです。
知らない場合で10年間経過すれば、その請求権は無くなります。

遺言書が無い場合は、相続人全員で確認した遺産について、遺産分割の協議をします。
そして分割内容を確定するためには、相続人全員による合意が必要です。
通常は遺産分割協議書を作成して、そこに相続人全員が署名・押印します。
印鑑は実印がいいでしょう。印鑑証明書を添付します。
尚、この場合、故人から生前に贈与された財産があった場合は、分割財産のそれは特別受益として、相続財産の計算に加えます。これを特別受益の持ち戻しといいます。
相続税の計算の場合は、相続開始前7年間の間に、故人から生前贈与があった場合は、その生前贈与を加算したものを課税価額として、相続税を計算します。

相続税を納税する

相続財産が非課税の範囲を超えている場合は、各相続人にはそれぞれ実際に相続で取得した財産の割合に応じて、相続税を計算し、相続開始から10ケ月以内に納税する義務があります。
納税する資金が足らない場合が延納申請もできます。

相続放棄

合計するとマイナスの財産になる場合は、相続開始から3ケ月以内であれば相続の放棄ができます。
特定のマイナス財産だけ放棄することはできす、相続人としての地位を放棄することになります。
家庭裁判所に所定の書式にて相続放棄の申立てを行います。
相続放棄すると、最初から相続人でなかったことになり、次順位の人が相続人になるので注意が必要です。

遺品整理・残置物の片付け

相続の手続ではないのですが、故人の遺品が残されていて、たとえそれが金銭的価値がないものであったとしても、相続人にとっては心理的に価値があるものはあります。
また、そうではなく残された残置物も当然あります。
これらの遺品を相続人で分け、さらに残置物の片付けをしなければなりません。
通常、遺品整理業者に依頼して行います。