相続人が多くて、手続きが大変
相続手続きで時間がかかる場合の原因の一つが、相続人がたくさんいる場合です。
10人ぐらいであればまだいいのですが、20人以上、場合によってはそれ以上の場合もあります。
相続手続きの大半は、財産の分割と分配です。
これを相続人全員で決めて行います。
遺言書があれば、遺言書は故人の最終意思なのでこれが優先されますが、遺言書が無い場合は、相続人全員残された財産の分割を決めることが必要です。
そのとき、一番最初にしなければならないことは『いったい誰が相続人であるのか?』を確認することです。
普段お付き合いのある近い親戚だけならまだわかるとは思いますが、全く付き合いのない遠い親戚、そもそも存在さえ知らなかった人がいることもあります。
そのためには、亡くなられた方(被相続人)の出生から、死亡までの戸籍を順番に辿ることになります。
高齢の方の場合、転籍(戸籍を移動させること)や、結婚・離婚・再婚を繰り返したりでいろんな市町村に戸籍がある人もいます。
これを順番に辿りながら、現在相続人である人を探します。
本来なら相続権のある人が既に亡くなられている場合は、その子供に相続権があります。(代襲相続)
行方不明の相続人がいる
戸籍をたどり、そこから住所もわかって一安心としたいところですが、そうはいかない場合があります。
それは、登録している住所地に当人がいない場合です。
住民票上には存在しているだけで、肝心の当人がいなければ、相続手続き(遺産分割協議)はできません。
それでは相続手続きが永遠にできないことになります。
それでは困るので、不在者財産管理人の選任という制度があります。
これれは生死不明などで、連絡がつかない相続人がいる場合、その配偶者、4親等内の親族、又は利害関係者が家庭裁判所に選任の申立てを行い選任されます。
家庭裁判所によって選任された不在者財産管理人はその他の相続人と遺産分割協議に参加できます。
ただ不在者財産管理人の役目はその不在者の法定相続分を守ることであるので、自由な分割はできません。
それでも、不在者財産管理人がいることにより、相続手続きが進むことに意味があります。
注意事項は、不在者財産管理人の選任には通常数か月~半年程度要することです。
一人でも所在不明な相続人がいた場合はこの過程を経る必要があります。
相続人に未成年者がいる
相続人を辿ると代襲相続の場合などで、その相続人が18才未満の未成年者である場合があります。
未成年者の場合、単独で法律行為はできません。
そのため遺産分割協議に参加することはできません。
この場合は親権者である法定代理人が遺産分割協議に参加します。
ただし、親権者と未成年者が利益相反する場合(例えば、父親が亡くなり、母と子が共に相続人の場合など)は親権者ではなくて、家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行い、特別代理人を選任してもらいます。
遺言書で特別代理人が指定されている場合は、指定されている人を特別代理人として選任の申立てを行います。
又、あと数か月で未成年者が成年に達するようであれば、それまで遺産分割協議をしないでおくという選択肢もあります。
この場合で、相続税のがかかる場合は申告・納税期限 (相続開始の翌日から10ヶ月以内)に注意が必要です。税理士に相談をしてください。
相続人が多くて意見がまとまらない
相続人の住所と連絡手段も全員わかり、未成年者の代理人もいる場合でも、財産の分割について全員の意見がまとまらないときは、分割はできません。
財産別にどの財産を誰に渡すのか、これを明確に決めた内容の書類(遺産分割協議書と呼ばれます)に相続人及び相続人代理人の全員が署名・押印する必要があります。
印鑑は実印でなくても効力はあるとなっていますが、実務上、金融機関の取引、不動産の名義変更には実印が使用されますので、実印で押印するほうがいいです。
ただ、それができなくて時間が経過してしまうと、さらに合意は難しくなることが多いです。
場合によっては、相続人の死亡によって代襲相続が起こり同意と署名・押印の必要な人に数が増えたりする可能性もあります。
こうなるとどうしようもないので、協議ではなく家庭裁判所の調停にて解決することも考えたほうがいいでしょう。
調停も決裂した場合は、最終的に訴訟による解決しかなくなります。
ただ、親子、兄弟姉妹、身内、親戚の間でそのような事態になることはなるべく避けたいものです。
このために有効な手段は遺言書です。
遺言書が残されていて、更に遺言書の内容を具体的に実現する権限がある遺言執行者が決められていてる場合は、各相続人は基本的にその内容に従う義務があります。
(ただし、遺言の内容が相続人の遺留分を侵害する場合はその部分については遺留分侵害額請求権があります。)
相続人がたくさんいて、話し合いの決裂が予想される場合であれば、遺言書の作成を考えられたほうがいいでしょう。
