大阪府堺市の遺産分割に詳しい、行政書士の岡田です。
相続関係の言葉は、法律用語でもあるので、普通の人にはとても理解しにくいことがあります。
その中で今回は『持ち戻し』について考えます。
私もこの言葉を初めて見たとき、正直なんのことかさっぱりわかりませんでした。
例を挙げて説明します。
夫が亡くなり、残された家族は70代の妻と50代の子供2人です。
結婚して20年以上は経過しています。
残された財産は評価額が3000万円の自宅と、銀行預金が3000万円です。
この場合の相続財産の分け方は、法定相続分(法律一応決められている分け方です。必ずしもこの通りでなくてもかまいません。)によると、妻が3000万円、子供が一人1500万円になります。
夫が生前に自宅を妻に贈与していたとします。
尚、結婚20年以上の夫婦間では住むための住宅の贈与をしても2000万円までは贈与税がかかりません。
ただこの場合で夫が亡くなった場合、妻が贈与された自宅は、相続財産(特別受益)とみなされて遺産分割の対象になります。
そうすると、どういうことになるかと言えば、妻は既に3000万円の自宅を夫の生前に贈与されているわけで、さらに妻の法定相続分は3000万円なので、遺産分割として妻は預金から受け取れる金額はゼロになってしまいます。
3000万円の預金は子供2人で1500万円ずつ分けることになります。
そうなると、妻にはお金が残りませんから、家はあっても老後のお金が無くなります。
こんなことが実際に起こりました。
そこで2020年に民法が改正されて、結婚して20年が経過した夫婦間で、住むための住宅を相手に贈与した場合、その住宅は将来の相続財産に含めなくてよくなりました。
将来の相続財産に含めること=相続財産の持ち戻し
と言います。
つまり、持ち戻しをしなくてよくなったのです。(持ち戻し免除の意思の推定)
だから、預金の1500万円を妻と子供2人で分けるようになります。
妻 2分の1 750万円
子供 4分の1 375万円(一人あたり)
こうなります。
妻にもお金を渡すことができました。これは妻(配偶者)を守るための法律改正ですね。
念のためにお伝えすると、結婚して20年以上経過してないとこれは使えないので、若い後妻に、不動産を贈与してもこれは使えません。
相続法って、このようになっているんです。
知らないと損したり、自分の思っていたこと違う結果になったりします。
ご自身にとって、どんな方法がいいのか、今のうちに考えておかれるのがいいと思います。
もし、何かございましたら、当事務所までご相談いただければ、何らかのヒントをお伝えできるかもしれません。