遺言と民亊信託を比較

2018年9月16日

自分が築き上げてきた財産を、自分が死んでからも自分の思うように活用したい、そんな思いを持つ方もおられるのではないでしょうか。

遺言

『遺言』は残念ながら、財産を誰に渡すという指定は出来ても(遺贈、相続分の指定)、その後その財産をどのように使うかを指定ができません。
もちろん、法的効果の無い付言事項などの方法で、希望を述べることはできますが、財産をもらったらその財産はその人のものであり、何に使おうが、どのように使おうが自由です。それが遺言の限界です。

民事信託(家族信託)

そこで登場するのが民亊信託(家族信託とも言われています。)です。
これは、遺言という行為が法律的には単独行為と言って、相手方には関係なく、自分一人だけの意思表示でできるのに対し、民亊信託は主に家族・親族間で行う契約です。
信託法という法律があり、そこに詳しく書かれています。

これを使えば、自分の財産を死後、有意義な社会活動に使ったり、孫に教育資金の贈与を継続したり、大切なペットの世話のために使ったりできます。
ここでは特定の『受託者』という人を決め、自分の財産の管理運営を任せる契約をします。そして、この契約をすることによって、財産管理を受託者に任せたわけですから、その後自分が認知症になっても問題なく財産の管理運営は行われます。受託者は基本的に無償で行います。(有償で行うことも可能です。)尚、有償かつ業として行っている、信託銀行の商事信託とは全く別物ですので、ご注意ください。こちらは信託業法の対象です。
そういう意味で認知症対策としても非常に注目されています。
おかしな言い方かも知れませんが、民事信託契約をしていれば安心して認知症になれます。

遺留分減殺請求対策

さらに、契約方法を工夫することにより、遺留分減殺請求を防ぐことも可能になります。
遺留分とは、ある一定範囲の相続人は認められている相続財産の請求権です。
今まで疎遠で、生前何の交流もなかった人が、親族というだけで、死んでから遺留分の主張をされるのは、意に沿わないことも多いでしょう。
民亊信託契約により、そういった身勝手な遺留分請求を防ぎやすくなります。

以上、少しだけ例を挙げましたが、民亊信託はその他にもいろいろなことができます。

但し、自由度が高い分、契約内容を問題なく決めるためには、いくつもの注意点があり、あまり考えないで契約してしまうと、思いどおりの効果が出なかったり、その他思いもよらない問題が発生したりします。

これは遺言に代わるものではなく、新しい考え方であり、別枠のものです。
遺言には遺言の良さがあります。だから遺言と民亊信託は共存できるものです。

どのような方法が自分にとって一番いいのかは各自の置かれた状況や希望によって異なります。
専門家とよく相談されることをおすすめします。
当事務所でも、ご希望の方には民事信託(家族信託)のご相談をお受けしています。

ちょっと聞いてみようかな、と思われたらお気軽にご連絡ください。