大阪府堺市の遺産分割に詳しい、行政書士の岡田です。
平成30年7月6日に成立した『民法及び家事手続法の一部を改正する法律』により相続法の多くの部分が改正されます。最高裁平成28年12月19日決定により、従来の判例を変更し預貯金債権が遺産分割の対象に含まれると判示しました。これにより遺産分割までの間においては預貯金債権が共同相続人全員の準共有状態であり、その全員が同意しなければ預金を下ろすことができなくなりました。
被相続人(亡くなられた方)から扶養を受けていた方は当面の生活費を払い戻すことができなくなり、大変困った状態になります。又は被相続人の債務を返済する必要がある場合なども、この預金から支払うことができなくなりました。
家庭裁判所を通して預貯金を払い戻す
改正家事事件手続き法200条3項は、「家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申し立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申し立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申し立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利害を害するときは、この限りでない。」と定めました。
つまり、遺産分割の審判又は調停の申し立てをしている人に限りますが、裁判所に申し立てを行い相続人の生活費の支出のために預金から引き出すことができるということです。
家庭裁判所の判断を経ないで、預貯金の払い出しをする
家庭裁判所の判断による預金の払い戻しには時間がかかります。そこで相続開始後、遺産分割終了までの間、一定の上限を設けた上で、裁判所の判断を経ることなく、金融機関の窓口において預貯金の払い戻しを受けることができる制度が必要です。改正民法909条の2は、「各共同相続人は、遺産に関する預貯金債権のうち相続開始時の債権額の3分の1に当該共同相続人の相続分を乗じた額については単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」と定めました。これは資金需要の強い葬儀費用を支払うための方策でもあります。